処遇改善加算の制度改正

毎年、大きな変更が繰り返される処遇改善加算ですが、令和6年度も改正が行われます。

※今回の基本的考え方は令和7年度とセットとなっているため、翌年度もこの内容で進む予定です。

 

【参考資料】

介護人材の処遇改善等(改定の方向性)」(令和5年11月30日)

令和6年度介護報酬改定の主な事項について」(令和6年1月22日)

令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」(令和6年2月6日)

 

【処遇改善加算関連の制度における経過状況】

処遇改善加算の一本化については、令和6年6月1日グループごとの配分ルールについては、令和6年4月1日からになりました。

 

「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容(案)」(令和6年2月6日発出)においては、職場環境等要件については、「令和7年度」と記載されています。

 

それぞれ別の文書を参考としていますが、介護事業も、障害福祉事業も、同じ処遇改善加算の制度を適用しているため、ほとんど同様の措置が取られるものとされています。

 

今回の改正に伴う賃金規程の見直しにつきましても、「令和7年度」までに作成すればよくなりました。ただし、職員周知もありますから、賃金改善の内容が確定次第なるべく早く作成することをおすすめしております。

処遇改善・特定処遇・ベア加算の3種類が一本化

現在の処遇改善Ⅰ~Ⅲ、特定加算Ⅰ・Ⅱ・なし、ベースアップ加算あり・なしの18通りから、処遇改善加算Ⅰ~Ⅳへの4通りに統合します。

【現行の制度】

【新制度】

【加算率の変更】(新制度で低くなった場合は、猶予期間があります。)

職員間の配分比率の撤廃

現行における特定処遇加算の職員間の配分比率は、A:1、B:1以下、C:0.5以下となる必要がありました。この配分比率を維持することが非常に難しく、特定処遇改善加算の導入に歯止めがかかっていましたので、この要件を撤廃し、事業所の柔軟な対応に任せることとなりました。

 

(A)経験・技能ある介護福祉職員:所属法人等での勤続10年以上の介護福祉士等

(B)一般の介護福祉職員:A以外の介護福祉に従事する職員

(C)その他の職種:A・B以外の職員(看護職員・運転手・調理職員・事務員等)

 

実績報告書のこの部分の計算が複雑だったため、手続きを簡素化したという流れです。考え方は変わりませんので、上記の配分比率は目安として実際の支給の参考にしてください。

 

例えば、介護職員よりもその他の職員の配分を増やすような極端なことをすると、処遇改善の目的や主旨を鑑みても不適切になりますので、監査で指摘は受けると思います。

職場環境要件の見直し

職場環境等要件については、いずれの事業所についても対応が必要となる項目です。なお、令和7年度からの実施となる模様です。

 

少なくとも令和7年度の計画書作成の際には、〇を付けて提出しなければならないため、それまでには要件を整えておく必要があります。

 

【処遇改善加算(+ベア加算)適用事業所】

(現行) 具体的項目①~㉔のいずれかの取り組み

( 新 )  各区分のそれぞれ1つ以上の取り組み(生産性向上は2つ以上)

 

【特定処遇改善加算(+ベア加算)適用事業所】

(現行) 各区分のそれぞれ1つ以上の取り組み

( 新 )  各区分のそれぞれ2つ以上の取り組み(生産性向上は3つ以上)

 

【現行の制度】

【新制度】

月給改善比率の見直し

ベースアップ加算については、賃金改善の合計額の3分の2以上を月額で支払うよう決められています。現在ベースアップ加算を採用している事業所においては、新加算Ⅳの部分の2分の1以上(例えば訪問介護は6.2%、生活介護は2.7%)を月額で支払うように変更されました。

 

なお、これから新たに処遇改善加算を申請する事業所においては、上記に加えて、現行のベースアップ加算に相当する金額の3分の2以上の月額改善が必要となります(実施済みの事業所との公平さを図るため)。

 

現在、処遇改善加算のみでベースアップ等支援加算を受けていない事業所につきましては、この要件を備えないと従前通りの加算を受けることができなくなります。(ベースアップ等支援加算なしは選択できません。)

 

【新加算Ⅰ~Ⅳのすべての事業所】

新加算Ⅳに該当する加算額の2分の1以上を月額で支給

 ⇒ 新加算Ⅳ適用の事業所であれば、加算通知額全体の2分の1以上を月額で支給

 ⇒ それ以外の事業所は、あくまで新加算Ⅳ部分の2分の1を月額支給となるため、

    計算上は、加算通知額全体の2分の1を下回ることになります。

 

※令和6年度中は見送りになり、令和7年度からの実施となります。なお、計画書には任意項目として概算が表示されます。

ベースアップをすることの誓約

今回の改正には、「令和6年度に2.5%、令和7年度に2.0%の基本給のベースアップを事業所判断でお願いする」内容がありました。

 

計画書にも「ベースアップの実施予定」欄が含まれております。そして、来年作成する報告書には「ベースアップ率」も記載されています。

 

実施できないやむを得ない事由があれば、それを記入して終わりになりますが、多くの場合は、実施せざるを得ない内容となっております。ただし、現時点では、2年間で4.5%必須ではないようです。(令和7年度にいきなり2年で4.5%必須項目になったらとんでもないことになりますが・・・)

 

実は、この部分より気にしなければならない項目があります。

計画書1ページ目の2(1)に「令和5年度と比較して令和6年度に増加する加算の見込額」という項目があります。今回、加算率が少なからず上がっており、令和6年6月からは、処遇改善加算の増額が見込まれます。

 

この増額部分については、処遇改善の内容関係なくして、原則、令和6年度に新たにベースアップを実施しなければなりません。

 

例えば、1人30万円(基本給+住居手当・資格手当・毎月支払う処遇改善手当などの固定給含む。時間外手当等の変動給は除く。)の職員が10名いる事業所と仮定します。

この事業所の賃金総額は1年間で3,600万円となります。令和6年6月において1人につき7,500円(2.5%)のベースアップを行うとすれば、ベースアップ後の賃金総額は3,675万円、令和6年度のベースアップ総額は75万円(10か月間)となります。

 

ここで、増加額の確定額が90万円だったときは、15万円不足することとなります。この場合、報告書には「×」がついてしまいますが、「令和7年度に繰り越してOKルール」により、不足した15万円については、①ⅰ)アの「うち、令和7年度の賃金改善に充てるために繰り越す部分の見込額」に不足分を入力することによって、「〇」がつくことになります。

 

ここではベア率2.5%としていますが、事業所判断でそれ以下でも構いません。ただし、令和7年度にもこの項目があり、令和6年度の借金がプラスされますので、慎重に検討して頂ければと思います。

 

なお、上記の例で増加額が50万円だったときにベースアップ総額を25万円減らして報告してもよいとは、今のところなっていないため、事業所にとってはさじ加減が問われる部分だと思います。

 

※Q&Aが公表され、問1-10には「令和7年度分の一部を前倒して本来の令和6年度と合わせて賃金改善に充てることが可能」と書かれています。ただ、報告書の様式にそれを反映する部分が見当たらないため、今後の情報提供に期待します。

 

今後、Q&A等で内容は変わるかもしれませんので、参考材料として見て頂ければと思います。