前回に引き続き、道内事業者事業継続支援金についてです。今回は、あまり周知されていない特例制度についてお話しします。
この制度は、一般の手続では用意できる書類が整わないという条件のもと、特例措置となっています。周知チラシの裏面のQ5「新規設立・開業は対象となりますか?」には、別冊をお読みくださいと書かれています。表面の要件の辺りに書かれていれば気付く方もいると思いますが、表面の要件を見たときに該当にならないと判断すれば、裏面まで目を通すことなくゴミ箱行きというのがDMの特徴です。そのため特例措置を知らないまま申請をあきらめている方もいるのではないでしょうか。
また、この特例要件というのは、細かい内容は違えど、過去の給付金や支援金でもあった内容となっています。今後同様の支援金があるとすれば、使える内容となっていますので一度ご拝読頂ければと思います。
なお、特例もたくさんありますので、レアな特例については概要のみ掲載しています。レア特例については、支援金ホームページの申請の手引き【別冊】をご覧ください。
①売上要件に係る証拠書類の特例
- 合理的な理由により確定申告書の写しが提出できない場合
- 個人事業者で確定申告の義務がない場合
②新規設立・開業特例
- 2020年(令和2年)4月~2022年(令和4年)11月までの間に法人を設立または個人事業を開業した場合
③合併特例【概要のみ】
- 売上要件の事業収入を比較する2つの月の間に合併を行っている場合
④連結納税特例【概要のみ】
- 連結納税を行っている法人(連結決算を行っているグループ法人)の場合
⑤事業承継(死亡)特例
- 売上要件の事業収入を比較する2つの月の間に個人事業者が事業承継(事業を行っていた者が死亡した場合も含む)を受けた場合
⑥罹災特例【概要のみ】
- 2018年(平成30年)または2019年(平成31年/令和元年)に発行された罹災証明書を有する場合 ⇒北海道胆振東部地震の罹災者
⑦法人成り特例
- 売上要件の事業収入を比較する2つの月の間に個人事業者が法人化した場合
⑧NPO、公益法人特例
- 特定非営利活動法人及び公益法人等で確定申告をしていない場合
⑨個人事業者で主たる収入を雑所得・給与所得で確定申告した場合
※特例措置については、事務局より詳細な実態聞き取りや追加書類の提出を求める場合があり、審査が長引く場合があります。
ちなみに、北海道電力が6月以降に電気料金を値上げする申請をしています。上がり幅がどのくらいかわかりませんが、個人的には非常に注目しています。ちょうど、クーラー稼働の時期なので、ある程度我慢しなければならないと覚悟をしています。
①売上要件に係る証拠書類等の特例
【概要】
- 事務局が判断する合理的な事由により、確定申告書等の写しが提出できない場合
⇒ 火事・水害などの災害等により、確定申告書が紛失してしまったときが挙げられます。
- 個人事業者で確定申告の義務がない場合
⇒ 売上から経費を差し引いた所得が48万円以下(基礎控除でゼロ)の場合、確定申告は不要。
ⅰ.事務局が判断する合理的な理由により、確定申告書が提出できない場合
【追加書類】
- 当該事業年の確定申告で申告した月次の事業収入を証明できる書類であり、税理士による署名または押印があるもの(様式任意)
法人については税理士と顧問契約している場合が大半だと思いますが、個人事業者となるとこのハードルは高いものと判断します。なぜなら、個人事業者が税理士に確定申告を依頼していることが少ないからです。また、この証明だけをお願いできる税理士を探すのも大変苦慮することと思います。
ⅱ.個人事業者で確定申告の義務がない場合
【追加書類】
- 当該年分の住民税の申告書類(市町村民税・道民税の申告書類)の写し(収受日付印の押印があるもの)
個人事業者で確定申告がない場合、住民税の申告は必要となります。
税務署に申告するときもそうですが、申告書控えを用意しないまま申告書を出してしまうと、手元に残らないため、慌ててしまうお客さまを目にしています。
例えば… (※ここでは税務署の例を挙げています。)
〔申告書のコピーを全く取っていない方〕
申告書類については、会計書類とともに一定期間保存しておく必要があります。(保存期間については、こちらを参照ください。) なので、こういうことは起こらないはずですが、このことを知らず保存していない方が少なからずいます。
この場合、税務署で事後的に写しをもらうことはできませんが、閲覧制度を利用しましょう。過去の申告書類をスマホなどで鮮明に撮影した画像をそのまま電子申告したり、印刷して送付する形をとることができます。なお、ぼやけて数字が判読できないのはダメなので、1枚だけでなく複数枚撮り、確認も怠らないようにしましょう。
〔申告書のコピーは保管していたが、一緒に提出していないため収受印がない方〕
(国税の)確定申告書に収受印がない場合、所轄の税務署で納税証明書(主にその2所得金額の証明)を添付することで収受印に代えることができます。なお、過去3年にさかのぼる分しか取得できないため、それ以前のものの場合課税証明書になります。住民税の申告書類の場合は、市町村の所得証明書を添付してください。
②新規設立・開業特例
【概要】
- 2020年(令和2年)4月から2022年(令和4年)11月までに法人を設立または個人事業を開業した場合
この部分、手引きでは2つの期間に区分して説明しています。
ⅰ.2020年(令和2年)4月から2021年(令和3年)10月までに設立・開業した場合
【追加書類】
■中小・小規模事業者等(法人)
- 基準月を含む事業年の法人税確定申告書別表一の写し
- 基準月を含む事業年の法人事業概況説明書(両面)の写し
■個人事業者
- 基準月を含む事業年の確定申告書第一表の写し
- 基準月を含む事業年の所得税青色申告決算書の写し(青色申告(一般)の場合)
- 次のいずれかの書類
- 個人事業の開業・廃業等届出書の写し(開業日が2020年4月1日~2021年10月31日、かつ、収受印が押印されているもの)
- 開業日等が確認できる公的機関が発行または収受した書類の写し(1.と同様)
2.の例としては、飲食店営業許可証や運送業許可証などがあります。
最初の2つの書類については、追加の書類というわけではなく当初の必要書類です。追加書類は個人事業者のみが必要となっています。
ここで重要なのは、追加書類ではなく、売上要件20%減の算定式が以下の2通りの選択ができることです。
【A 基準月と対象月の同月比較】
これは、原則通りの比較方法となりますが、白色申告、青色(農業・現金)の方は選択できません(前回説明した通りです)。
【B 事業収入の月平均との比較】
- 2020年(令和2年)4月~12月までに設立・開業した場合は、開業月から2020年12月までの事業収入の月平均を基準月とすることができます。
- 2021年(令和3年)1月~10月までに設立・開業した場合は、開業月から2021年10月までの事業収入の月平均を基準月とすることができます。
2021年1月から10月までの該当者は、2021年10月までの事業収入の月平均であることに注意が必要です。2021年12月まで(2021年の年間の月平均)ではありません。
ⅱ.2021年(令和3年)11月から2022年(令和4年)11月までに設立・開業した場合
【追加書類】
■中小・小規模事業者等(法人)
- 設立年の法人税確定申告書別表一の写し
- 設立年の法人事業概況説明書(両面)の写し
※決算期が到来していない場合は、別途事務局が定める新規設立・開業に係る収入等申立書兼誓約書の提出が必要となります。
■個人事業者
- 開業年の確定申告書第一表の写し
- 開業年の所得税青色申告決算書の写し(青色申告(一般)の場合)
- 次のいずれかの書類
- 個人事業の開業・廃業等届出書の写し(開業日が2021年11月1日~2022年11月30日、かつ、収受印が押印されているもの)
- 開業日等が確認できる公的機関が発行または収受した書類の写し(1.と同様)
2.の例としては、飲食店営業許可証や運送業許可証などがあります。
※2022年に開業した方は、2022年(令和4年)分の確定申告終了後に作成された確定申告書を添付してください。
ここでは、事業形態によって選択方法が変わります。
【A 基準月と対象月の単月比較】
2021年(令和3年)11月~2022年(令和4年)11月までのいずれかの月を基準月とし、2022年12月以降のいずれかの月を対象月とすることができます。
この比較で注意が必要なのは、同月比となっていないところです。つまり、同じ月でなくても、上記の期間中の基準月と対象月とを選んで20%減であれば構わないということです
この選択ができるのは、法人または個人事業者(青色申告(一般))の方のみです。
道内事業者等事業継続緊急支援金「申請の手引き(別冊)」より抜粋(以下同様)
【B 事業収入の月平均との比較】
- 2021年(令和3年)11月~12月までに開業した場合は、開業月から2021年12月までの事業収入の月平均を基準月とすることができます。
- 2022年(令和4年)1月~11月までに開業した場合は、開業月から2022年12月までの事業収入の月平均を基準月とすることができます。
この選択ができるのは、白色申告者または青色申告者(農業・現金)の方のみです。
⑤事業承継(死亡)特例
【追加書類】
- 個人事業の開業・廃業等届出書の写し(売上要件の基準月と対象月の間に事業の引継ぎが行われたことを明記されていること)
- 事業承継前の売上要件の基準月を含む前任者と後継者の確定申告書第一表の写し
※後継者が事業承継前に確定申告をしていない等の理由により、確定申告書の写しを提出できない場合は、提出不要です。ただし、事業収入の合算はできません。
⇒ 事業収入の合算について、事業承継した月の売上高を基準月とする場合、前任者が1月前半で30万円、後任者が1月後半で40万円の売上を上げていた場合、70万円として計上することができます。ただし、前任者の確定申告書がない場合、30万円の証明ができないので、後任者の40万円だけで判定します。
⑦法人成り特例
【追加書類】
- 法人化前の個人事業に係る売上要件の基準月を含む事業年度の確定申告書第一表の写し
- 所得税青色申告決算書の写し(青色申告(一般)の場合)
⑧NPO,公益法人特例
【追加書類】
法人種別 | 年間収入の計算書類等 |
特定非営利活動法人(NPO法人) | 活動計算書 |
学校法人 | 事業活動収支計算書 |
社会福祉法人 | 事業活動計算書 |
公益財団法人・公益社団法人 | 正味財産増減計算書 |
NPO法人・公益法人等であり、かつ、収益事業を行っていないため確定申告をしていない法人の場合、国や自治体に提出している上記の書類を提出します。
⑨個人事業者で主たる収入を雑所得・給与所得で確定申告した場合
【要件】
- 雇用契約によらない業務委託契約書に基づく事業活動からの収入であって、税務上、雑所得または給与所得の収入(以下「業務委託契約等収入」という。)として扱われる収入を主たる収入としていること。
- 以下の要件がすべて満たされていること。
- 売上要件の基準月以降、被雇用者または被扶養者でないこと(雇用形態の変更や雇用者と結婚して扶養に入った場合など)
- 売上要件の基準月を含む事業年の確定申告において、確定申告書第一表の「収入金額」の「事業」欄に記載がないこと
-
確定申告書第一表における「収入金額等」の欄のうち、「給与」「雑業務」「雑その他」の欄に含まれる業務委託契約等の収入の合計が、収入区分㋒~㋘の中で最も大きいこと
要件の2.の事業所得が1円でもあるときは、通常の申請となります。