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法定福利費と福利厚生費

法定福利費と福利厚生費の違い

法定福利費(販売費及び一般管理費=以下「販管費」といいます。)とは、従業員等に対する法定保険料(社会保険料や労働保険料)のうち、会社または個人事業者負担部分の費用のことをいいます。

 

福利厚生費(販管費)とは、従業員等の労働環境を整備するために支出する費用のことをいいます。

 

なお、勘定科目として法定福利費を使わないときは、福利厚生費として一括処理しても構いません。

 

勘定科目全般にいえることですが、個人事業においては、あまり細分化すると訳が分からなくなってしまう危険性があります。あるときは法定福利費に入れたり、あるときは福利厚生費に入れたりするのはご法度です。最初に決めたルールは、少なくとも一会計期間中はブレてはいけませんので注意が必要です。

 

弥生会計などの電子会計で行っているときは、なるべく少ない勘定科目を使い、細かく分けておきたいものについては補助科目を使うことも効果的です。

法定福利費にできる費用

まずは、個人事業者と会社規模に分けて説明いたします。

 

個人事業者につきましては、従業員を雇っている場合に限り、この勘定科目を使用することができます。また、専従者として同一生計内の家族を従業員として雇っている場合は、原則経費に入れることができません。

 

もちろん、青色申告に基づく専従者の申告をしていない同一生計内の家族の給料等は、個人事業者の収入(事業主貸)と同等に扱われるため、一切の経費にはできません。

 

この場合、事業経費ではなく、社会保険料控除として全額所得控除が受けられます。したがって、事業経費に入れて社会保険料控除も受けているという二重控除のような場合は、明らかに過少申告になってしまいますので注意しましょう。

 

なお、専従者でも他の従業員を雇用しており、協会けんぽなどの健康保険に加入しているときは、経費にできる余地はあります。

 

法人経営者(ひとり会社含む)につきましては、原則、法定保険料の会社負担分について経費にすることができます。なお、自己負担分につきましては、社会保険料控除として所得控除されることとなります。

 

ひとり会社の場合で役員報酬が発生する場合は、通常は国民健康保険から外れ、健康保険や厚生年金への加入義務が生じます。役員報酬がない(または極端に少ない)ときは、国民健康保険や国民年金に加入し続けられるので、この場合は社会保険料控除の所得控除となります。

 

  • 健康保険料(事業主負担分)
  • 介護保険料(事業主負担分)
  • 厚生年金保険料(事業主負担分)
  • 雇用保険料(事業主負担分)
  • 労災保険料 など

福利厚生費にできる費用

福利厚生費として経費とするには、以下のような一定の要件があります。

  1. 賃金や給与としてではない(認められない)こと
  2. 全従業員を対象としていること
  3. 金額が社会通念上妥当であること

 

  • 常備医薬品、健康診断費用、予防接種費用、人間ドックなどの医療関係費用
  • 社員寮・社宅・食事支給などの費用や社員旅行・忘年会・新年会などの親睦活動関係費用
  • 従業員に対する慶弔見舞金・香典・結婚祝い・出産祝いなどの支出
  • 従業員に対する制服費、クリーニング代、お茶代
  • 資格取得費用、研修費などの教育訓練費用  など

福利厚生費にできない費用

福利厚生費にできない例として以下のものがあります。

 

  • インセンティブ(報奨)として出す現金や商品券は、福利厚生費に計上できず、受け取った本人に対して給与として課税されます。
  • 一部の役員や限定した従業員に対して支出するものについては、福利厚生費とは認められません。ただし、新年会の実施に伴う事業所からの一部会費助成について、全員に案内を出したが、一部不参加(少数)があった場合は、福利厚生費として認められます。逆に少数しか参加者がいなかった場合は、福利厚生費として認められないことがあります。
  • オプション付きなどの高額な人間ドック等の健康診断については、「金額が社会通念上妥当」とはいえないため福利厚生費にできません。
  • 個人事業者自身その他同一生計内の親族に対しての福利厚生費に該当する支出については、従業員ではないので経費にすることはできません。

 

税務調査で福利厚生費として計上しているものが給与や接待交際費と指摘されないよう、各種規定を整備する必要があります。