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誤った確定申告書の事例

確定申告書関係を取り扱うのは税理士の業務ですが、行政書士がお客さまの確定申告書や会計書類に目を通すことは少なくありません。

 

確定申告書については、融資や補助金・給付金の際に添付書類として要求されます。また、会計書類につきましては、建設業許可・産業廃棄物許可などの営業許認可で所定の様式に書き換える業務があります。

 

税理士作成の確定申告書であれば特に問題はありませんが、個人で作成しているものに関しては、提出する前にチェックする必要があります。

もし、確定申告書や会計書類に誤りがあった場合、申請が通らない可能性があります。実際に事業復活支援金などの支援金では、このような不備がありました。

 

会計書類を所定の書式に書き換えるときには、正しい数字に代えて提出すればよいのですが、確定申告書については、こちらで訂正することはできませんので、修正申告の必要が出てきます。

 

このように正しい会計書類や確定申告書を作成することは、適正な税務申告のためだけではなく、迅速な申請のためにも必要ということがいえるでしょう。

 

以下のものは、実際にあった事例です。確定申告書の作成の折には、一度目を通していただければと思います。

補助金・給付金を受け取ったときは、その他の収入(雑収入)で計理

補助金・給付金(以下「補助金等」を受け取ったときには、会計上の勘定科目は「雑収入(収益)」で計理します。

 

青色申告決算書の損益計算書では、1枚目の売上金額欄には、通常の売上金額と雑収入を合計した金額となりますが、2枚目の売上(収入)金額欄には、1年分をまとめて「雑収入」に記入することとなります。したがって、月別の売上高には計上しないこととなります。

もう一つ押さえておかなければならないのは、事業のために受け取った補助金等は、課税の対象となります。したがって、すべての国民に支給された10万円の特別定額給付金のような非課税対象ではありませんので、間違いように気をつけたいところです。

 

【誤った例】

  • 青色申告決算書(収支内訳書)の売上高で計理
  • 確定申告書の雑所得に記入
  • 国から支援してもらったものなので非課税だと思い、全く計理していない。

収入金額と所得金額の違い

確定申告書の1枚目には、「収入金額等」欄と「所得金額等」欄があります。

収入金額等」欄には、事業収入や給与収入・年金収入などの収入のみを記入します。

所得金額等」欄には、事業収入等から必要経費を差し引いた所得(利益)を記入します。

 

 事業所得の計算:「事業収入」-「必要経費」=「事業所得

【誤った例】

 「収入金額等」の「事業・営業等」欄に青色申告特別控除前の所得金額(損益計算書43番)を記入し、「事業金額等」の「事業・営業等」欄に控除後の所得金額(損益計算書45番)を記入していた。

⇒ 今までずっとその方法で申告をしていたため、修正申告をすることを望まないという結果になり、事業復活支援金の申請を断念しました。

 

なお、青色申告特別控除額は、確定申告書1枚目の56番に記入します。

その他の不適切な経費の計上

次のものに関しては、各勘定科目として不適切な例です。詳しくは、これから各勘定科目の説明をするときにしていこうと思います。

 

なお、税務署では、中身の数字を細かく見ているわけではありませんので、間違っていたとしてもそのまま通ってしまいます。(個人事業者の場合)

 

そのため、本当は経費でないものを計上したとしても、ほとんどの場合スルーされることとなります。ただし、絶対、個人事業者に税務調査は入らないとはいうことはありませんので、常識の範囲内で作成してください。

 

補助金等の申請で記入方法の誤りに気付き、後から修正したくても納税金額に変更がない場合は、修正申告を受け付けてくれませんので注意が必要です。

 

【不適切と思われる経費の計上】

  • 従業員を雇っていないにもかかわらず、「法定福利費」または「福利厚生費」で計上している。さらに、「社会保険料控除」にも同等の金額を計上しているため、ダブルで税金控除されている。
  • 青色事業専従者給与の届出をしていないにもかかわらず、同一生計内の家族の給与を経費としている。

     ⇒ なお、専従者給与の特例控除を使うときは、配偶者控除等は使えません

       どちらが得か考えてから適用しましょう。

  • 家族での食事、プライベートの衣服類・書籍代金を事業経費に計上している。
  • 家事共用で使用している自家用車のガソリン代や車検代等を事業経費に計上している。
  • 自宅兼事業所の場合で「水道光熱費」や家賃等を事業按分せずに全額経費として計上している。

 

まず、家族で外食に行った時に領収証をもらって経費とするのは、明らかに脱税行為です。

 

次に、衣服や靴なども業務に関係のない支出を経費とするのも同様です。ただし、つなぎ・作業靴などの業務に使うために購入したものを家庭でも使い回すのは許容の範囲内だと思います。

一番難しいのは、スーツやスラックスなどの紳士服です。プライベートでは着用しないと思いますが、他の税理士さんのHPを拝見しますとアウトらしいです。

下記の【経費に計上するときの目安】のサラリーマンがスーツを買ったからといって、経費になるかという部分が根拠となるのではないかと思います。

 

自家用車と自宅兼事業所など業務用と居住用と混在している場合、適切な方法での按分(振り分け)が必要となります。

例えば自動車については、自家用または事業用のどちらかの使用メーター数がわかるように運行記録表をつける方法があります。自宅兼事業所の水道光熱費については、事業で使用している面積で按分する方法があります。

 

このブログでは、厳格に会計処理を行った場合で取り上げます。これぐらいは良いのではないかと思うときは、自己責任の範囲内で行うことをお勧めします。

 

【経費に計上するときの目安】

  • 事業関係は除き、給与所得者(サラリーマンなど)が計上できないのに、あらゆるプライベートの支出を経費としていないか。
  • 第三者にきちんと事業用で使っていることを説明できるものか。ちなみに、「経費にできないことは知らなかった」という言葉は禁句です。脱税行為が見つかった場合には、過怠税などの追徴課税がなされます。

 

わからないときは税理士や公認会計士などの専門家に聞くのが一番ですが、個人事業者で税理士と顧問契約をすることは少ないかと思います。

あとは、確定申告書に関する書籍、勘定科目に関する書籍を1冊ずつは購入しておけばリスクが防げますし、インターネットで検索する方法もよいと思います。